2004年5月31日

Confirmation(コンファーメーション)

祝日の月曜日の朝、ビッチが、「今日は3人のコンファーメーションがあるから、午後、お茶を飲みに出かけましょ」といった。

コンファーメーションとは、春から夏にかけての時期に行われる、14才になった子供(若者)のお祝いで、 日本でいえば、七五三と成人式を足して2で割ったような行事、といえるだろうか。 これはキリスト教の儀式で、生まれてまもなくのときに受けた洗礼は自分の意思によるものではないため、 14才になったときに、あらためて自分の意志でキリスト教に帰依することを表明する、という意義を持っている。

儀式の当日は、親戚家族中が民族衣装を着て教会に行く。 このときに撮る、民族衣装を着た家族の記念写真は、グリーンランドのどこの家に行っても、 たいてい何枚かは部屋に飾られている。そのあとは家で、親戚、近所の人、村中の人に食事や、 お茶、ケーキをふるまう。私が出会ったのは、ちょうどこの場面だった。


家の中では、ケーキやお茶、コーヒーをふるまわれる。

まず、一軒目は、女の子のアンナ・マリーの家だった。すべらかな肌触りの(おそらく絹)目の覚めるようなピンクの上着に、 狐の毛皮のショートパンツをはき、腿までの長いブーツ(カミック)という、カーナーク地方の民族衣装を着ている。 家の外も、中も人々でにぎわい、訪れる人はみんなアンナ・マリーと握手し、お祝いのプレゼントやお小遣いをあげていた。 ビッチに、「私もお祝いをあげたいけど、いくらくらいがいいかな?」と聞くと、10か20クローネ(400円くらい)でいいというので、 握手して渡すと、すぐに棚においてある貯金箱にチャリンと入れた。


今日の主役、14才のアンナ・マリーと弟。
アンナ・マリーの民族衣装と携帯電話の組み合わせに注目。

外では雪の舞う中、大人を中心に、グリーンランド食の並ぶテーブルを囲んでいる。 アザラシの肉のグリル、セイウチの肉のシチュー、半冷凍のサーモン、干した魚などが並ぶ中に、 アッパリアホの残骸を見つけた。すると、ドッチが「キビヤックよ」といった。 匂いをかぐと、確かに発酵したものの匂いだった。でも、どこかで嗅いだことのある匂いで、 幸い私は「クサい」とは感じなかった。例えるなら、塩辛の匂いの強烈なもの、と言えるかも知れない。 ついに、キビヤック初体験になるかと思われたが、あいにく今日のお祝いの分のキビヤックは全部売り切れていて、 結局、匂いだけで終わってしまった。


入れ替わり立ち替わり、町中の人がやってくる。


アンナ・マリーの祖父ヤコブとその妻。

グリルしたアザラシの肉を、それぞれが切って食べる。 パーティに行くときに、自分のナイフを持っていくと便利。 カーナークの人たちは、ナイフを箸のように使っている。


雪が舞い散る中、あたたかいシチューを食べる。
肉はもちろん、カーナークで獲れたアザラシ等。


血も一緒に煮込むので、すごくコクがあり、身体が温まる。

次の家は、男の子のコンファーメーションだった。男の子の民族衣装は、 綿の白いアノラックにシロクマ毛皮のズボンに、カミックだ。 これが、カーナーク地方の男性の民族衣装だが、この日に出会った大人の男性たちは、 西グリーンランドと同じように、黒いズボンをはいていた。


民族衣装を着た家族。
白いアノラックに黒のズボンが、グリーンランド男性の正装。

ここでは、また違うごちそうに出会った。イッカク(グリーンランド語では、デラルワという)の肉のかたまりが、 まるごとおいてあって、それを小さな斧(おの)で、豪快にたたききって食べる。 イッカクのシーズンは、まさに始まったばかりで、アイス・エッジ(氷と海の境)で、 先週誰かが一匹捕獲したという噂は聞いていた。そのハンターは、たぶんこの家の家族か、親戚なのだろう、 その今年最初のイッカクが、お祝いの席に登場したというわけだ。


今年初めての、イッカクの肉を楽しむ。

もう一つの目玉は、アザラシを丸ごと発酵させたもので、アザラシ自体から、キビヤックのような匂いが漂っている。 ビッチが試しにちょっと食べてみると、「ナガヨ(ダメ)」といって、一口も食べずに口から戻した。 ビッチは、キビヤックも苦手そうだったから、匂いの強いものが嫌いらしい。


アザラシ肉の発酵食品。
お腹がいっぱいだったせいもあるけれど、これにはついに手が出なかった。

「グリーンランド人」「イヌイット」といっても、地方ごとに特色があるし、いろいろな人がいて、 個人個人違うから、ひとくくりにまとめることは、とうてい不可能だ。 ベジタリアンのグリーンランド人には、まだ出会っていないけれど、生肉が苦手という人もいたし、 私が生のアザラシと肝臓を食べたといったら、信じられないという顔をされたこともある。

最後のコンファーメーションも、男の子だった。ちょうど、「コイン探しゲーム」をやっているところだった。 「25」と書かれたコインを見つけた人が勝ちというゲームのようで、みんなが家の周りをぐるぐる歩き回って探していた。


コイン探しをする人々。見つけたのは、小さな女の子だった。

一日にその町のコンファーメーションを全部行うことはできないので、何人かずつ予定をくんで、 5月末から7月にかけての間に、日曜日や祝日に順番に行われるのだそうだ。 天気が悪かったせいもあり、カーナークに来てから、ほとんど人に出会っていなかったけれど、 今日は、コンファーメーションで、家々をはしごする、たくさん(?)の人が道を歩いていて、 それだけで町が生き返ったように見えた。


ナショナル・フラッグのもとで、家族親戚がつどって記念撮影。

海の氷も割れ始め、イッカク漁もスタートした。 コンファーメーションの華やぎと共に、カーナークも夏に向けて動き出したようだ。


人々が行き交い、見違えるように活気のあったカーナークの一日。

    


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