宮下典子隊員の日誌

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2008年2月28日

ドンドンと、ドアをたたく音で目が覚めた。「時間ですよ〜」と、大場さんの声がする。
時計を見ると8時57分。9時には集合して出発準備オーライはずだったのに、完全に寝すごした。おおあわてで飛び起きると、隣の部屋からもバタバタと動き出す音が聞こえる。
長谷さんも寝坊したらしい。それでも、なんとか予定通りの9時半には宿を出て、空港に向かった。

今日は一日移動日。さらにさらに北へと向かう。
飛行機を乗りつぐたびに、機体が小さくなり、乗っている人も少なくなる。
レゾリュートに向かう飛行機では、私たち以外は、一人の青年と、軍服を着たとても強そうなおじさんだけだった。

ケンブリッジ・ベイからレゾリュートまでは、2時間半。
左右に見渡すかぎりの雪原が広がっている。
二人のパイロットの操縦するブルブルと小刻みにふるえながら飛ぶ小さな飛行機で、大場さんも、長谷さんも、青年も、将校のおじさんも、みんなまどろんでいる。

丸い窓からの風景が午後の日差しから、夕暮れのトワイライトになると、空と地平線が接するところは淡いピンク色に変わり、むらさきになり、その色はだんだん濃くなり、ついには真っ暗な闇に変わった。

やがて闇の中に、オレンジ色の光の粒のかたまりが浮かんだ。
レゾリュート・ベイ。
北極冒険の出発地として、世界中の冒険家をむかえてきた場所だ。
飛行機から出て10メートルほど歩くだけで、今までに経験したことのない冷気に身体が驚く。十分な服装があるから寒くはないけれど、頭皮や眼球にまでも冷たさを感じる。

どうして、わざわざそんなに寒いところばかりに行くの?
出発前、何人の人にこう尋ねられたことか。
その答えは、きっとこの旅が教えてくれるだろう。
人はどうして冒険するのか。
その答えは、きっと一つじゃないだろうけれど、これから出会うすべての時間と出来事をとおして、探していきたいと思う。

宮下 典子

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