宮下典子隊員の日誌

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2008年3月13日

季節の変化 気候の変化

雨が少なかった去年の夏のせいで、グリスフィヨルドは水不足気味らしい。足りない分は毎日氷河から氷を切り出してきて、村の中央にある貯水タンクに入れている。この作業は7月頃までは続けられるそうだ。一方首都のイカルイトでは、去年の夏には雨が異常に多く、またそれは北極圏特有のキリのような雨ではなくて、びちゃびちゃと降る、傘が必要なほどの雨だったという(通常は雨が降っても、傘を使う人は少ない)。


氷河から切り出してきた氷。

だんだん温かくなってきている、というのが気候変動についてたずねたときの大方の答えだ。例年10月に張りはじめる海氷が11月に張るようになったり、3月なのに4月のような気温だったり、おしなべて、季節が1ヶ月ずれているように感じるという。


アザラシの仕かけ網をのぞくハンター。獲物はかかっていなかった。

イヌイットは、一年12ヶ月についての、独特の呼び名を持っている。これは、ヌナブトの中でも地域ごとに違うが、グリスフィヨルドでは、12ヶ月をこんなふうに、生活と自然の営みとに結びつけて表現していた。

3月は、アザラシの子が早く生まれると凍って死んでしまう月
4月は、アザラシが氷の穴から顔を出す月
5月は、夏のテントをたて始める月
6月は、カリブーが子供を生み始める月
7月は、鳥の卵がとれる月
8月は、カリブーに新しい毛が生えてくる月
9月は、カリブーの毛が、厚くなってくる月
10月は、海に氷がはりだす月
11月は、家族や友達の消息がわかる月(氷が張り、犬ぞりで海を越えて遠くの村にいる親戚や友人を訪ねることができるから)
12月は、完全な暗闇の月
1月は、光がだんだん戻ってくる月
2月は、太陽が昇ってくる月

村の西に見える氷河は、20年前はもっと大きく盛り上がっていたと、みなが口をそろえて言う。アウユイトゥック(Ausuittuq)。イヌイット語で「決して氷の溶けない場所」という名前を持つグリスフィヨルドなのに、「溶けてはじめているんだよ」とつけ加えながら。

あたたかそうなオオカミの毛のマフラーがよく似合う村の女性。

宮下 典子

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