メッセージ

グローバル・エドベンチャー「カナダ北極圏の旅」報告

グローバル・エドベンチャー「カナダ北極圏の旅」は、北緯82度13分、西経68度02分、ワードハント島まで200kmあまりを残した地点で、例年よりも2〜3週間早く訪れた春と共に終わりを告げました。これからは、今、私たちが目にしている北極圏の姿を、世界の人々に向けて報告していくことに全力を挙げることにします。世界中の人たちが、北極圏の現実を捉えて、どのように行動していくのか考えて欲しいと感じました。

現地時間 2008年6月2日10時 24分
北緯82度13分、西経68度02分
大場満郎

これまでの経過は以下の通りです。

グローバル・エドベンチャー「カナダ北極圏の旅」は、カナダ北極圏レゾリュートからワードハント島までの1,570Kmを縦断し、旅を続けながら、カナダ北極圏の自然環境を3年前と比較し、体験、調査、発信することを目的としました。地球上のこの地域が今どのような状態にあるのか、動物たちの生態はどうなのか、そこに暮らす人たちの生活は温暖化のなかでどのように変化しているのかを、実際に歩きながら報告することを目的にして、出発しました。

3月6日、北緯74度43分、西経94度55分のイヌイットの村レゾリュートを、大場満郎・長谷徹志の両隊員は、-40度の寒気の中から出発しました。途中3月26日、体力の限界に達した長谷隊員は、北緯75度27分、西経93度35分にて、凍傷と疲労により中止せざるを得ませんでした。これ以降、大場隊員は4月15日に北緯76度25分、西経82度49分のカナダ最北端の村グリス・フィヨルド、5月9日に北緯89度59分、西経85度49分のユーレカ・ウェザーステーションを経由し、単独で旅を続けていきました。

ベースキャンプは宮下典子、土岐 帆の両隊員があたり、情報収集や補給準備、定時連絡といった日々の責務をこなしながら、宮下隊員はイヌイットの村を飛び回り、その生活や文化をホームページの隊員日誌を通じて発信し、土岐隊員は氷原へ赴き、動物や雄大な自然をそのカメラに収めました。

この間、日本をはじめ、ドバイ、コスタリカ、ドイツなどで暮らす小学生たちと、4名の隊員は衛星電話を通じてのべ30回以上の交信を重ね、カナダ北極圏の現実を伝えてまいりました。また、グリス・フィヨルドでは、村の人々と、これまでの旅のことやこの地域の環境の変動について語り合い、交流を重ねました。さらに、グリス・フィヨルドの子ども達と、日本の満沢小学校の子ども達を結んで交信を行いました。

ユーレカを出発してから日に日に暖かくなり、5月20日以降、岩肌や石が露出している地帯が現れました。ウェザーステーションや衛星写真や現地に詳しい人たちから情報を収集して、雪や氷が残っている所を探して、歩を進めて行きました。

5月29日、大場隊員は、ワードハント島へ向かう経路にある氷河湖を目指しました。しかし、氷河湖の入り口には、氷の上に周囲の氷河、氷冠から解け出した水が溜まり、左右は切り立った崖。ソリを引いて進むには、非常に難しい環境でした。ベースキャンプで衛星写真を分析しても、春の訪れとともに、雪や氷のない地帯が日に日に変化し広がっています。

5月31日、様々な情報を集め、ルートを分析した結果、これから先、ワードハント島までソリを引いて歩くのは不可能である、と判断しました。急ぎ、旅路を進めてきましたが、事前の予想を上回る速さで春が訪れ、ここで時間切れになりました。

グローバル・エドベンチャー「カナダ北極圏の旅」は、極北での旅を終えました。これからは、北極圏の現状を人々に伝えていくという新たな旅が始まります。大場隊員は極北を歩き、見て肌で感じたことを、長谷隊員は降雪サンプリングからもたらされる情報を、宮下隊員は変わりゆくイヌイットの生活や文化を、土岐隊員は極地の厳しい環境下で生きる動物達のことを、隊員それぞれがシンポジウムや講演活動などを通して伝えていきたいと考えています。
この新しい旅に、変わらぬご支援、ご助力を賜りますよう、宜しくお願い申し上げます。

最後になりましたが、このプロジェクトを支え、協力してくださった、外務省、環境省、カナダ大使館、カナダ観光局を始めとする官公庁の皆様、装備や支援金などを提供していただいたスポンサーの皆様、個人としてカンパをしてくださった皆様、パイロット校として協力してくださった学校の皆様、ホームページから応援していただいた皆様、この旅で出会い、関わった全ての皆様に、篤くお礼を申し上げます。

2008年6月2日(現地時間)

グローバル・エドベンチャー「カナダ北極圏の旅」
隊長:大場満郎
隊員:土岐 帆
隊員:宮下典子
隊員:長谷徹志
事務局:堀内耕介
事務局:小林 守

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