2004年5月31日

ゴール地点に到着

今日は最終目的地点に到着する。朝7時30分ごろ出発してここに14時54分に到着する。ゴール地点の位置は北緯81°西経49°59′、 高度が896mの地点である。なんと599mもの高さを下っていくのであり、 がりがりの蒼氷の裸氷帯の山をスキーを八の字に広げてブレーキをかけ続けたまま、ソリもほとんど横滑りしながらときには横転し、 クレバスをぬうように下っていく。周囲の山々が全て氷に覆われているのであり、しかもクレバスが無数にあるので気が抜けず、 恐ろしい光景である。


雪をかぶっているが、幅30mほどのクレバス。

山の平坦なところには湖があり、今は凍っていて紺色に見える。 逆に高いところから小川のように溶けた水が流れ込み湖を作るのだ。湖の氷は平らで、飛行機も降りられるとのことだ。


彼方を眺める大場@ゴール地点。

山々は比較的斜面がなだらかな所も多く、スキーのストックで軽く力を入れるだけでスーっと滑ってくる。 裸氷帯はでこぼこしているところも多く波を乗り越えて進む船のようにそりもすいすいと進んでくる。 長谷隊員にとっては始めての経験であり、かなり大変そうで、私よりはるか後方に小さくなり進んでくる。 私にとっては楽にすいすいと進めるのに全く不思議な気がする。経験とはこれほど大きく違うものなのかな。

裸氷帯の山々を下ってくるとクレバスが無数にある。雪をかぶり隠れているが、スキーやストックで雪をつくと、 ズボッと穴が開き、濃い蒼色の氷が底なしに望める。雪を落としてやるとさらさらさらさらと吸い込まれるように落ちていく。 幅が1cm、2cm、1m、2m、3m程度のもあり、人間をソリごと吸い込むのも簡単である。


雪をかぶり隠れていたクレバス。

考えてみてほしい。自分が立っている山も含め、全てが1,000m以上の厚い氷に覆われているのである。 しかもこの氷の大陸は少しずつ押し出され、氷河となって海へ流れ出ていくのだ。 こう流れるときに押されて氷が割れたのがクレバスである。 不気味な存在ではあるが、神秘的でもあり、しかも美しいものである。


ゴール地点の風景。

今日、氷河を下ってきて、途中で湖があったので、その上を進んでくる。夏は氷が溶けていたるところが小川のようになって水が流れる。 その水が流れた跡が、ガラスを割ったようなめちゃくちゃな氷となり、乱雑に敷き詰められたように溶けて、それが凍り、 太陽の光を浴び、万華鏡のように光り輝いている。初めて見るので、その神秘的な色と形に感動した。


ピックアップ

これからツインオッターという小型飛行機でピックアップをしていただくことになっている。 飛行機はカナダのレゾリュートベイから3時間掛けてカーナーク(グリーンランド西岸北部)に飛んでくる。 カーナークで燃料を補給してそこから2時間ほどで私たちのいるキャンプ地へ飛来する。

私たちは滑走路を作らねばならない。 アスファルトならぬ、氷と雪の滑走路である。長さが300m幅が30mの平らな滑走路が必要なのだ。 今日私は足で歩き測ってみた。二歩で1m、およそ滑走路として十分なほどの長さと幅の平らな雪原をなんとか見つけることが出来た。 2、3箇所、雪の凹凸があり、これはシャベルで削り取って平らにする必要がある。明日、長谷隊員と行うつもりだ。 ツインオッター機にはソリがついており雪原や裸氷帯にも楽々と着陸できるのである。


気温

気温が高くなっている。それもそのはず、2,000m以上の内陸氷床からここ目的地点の896mまで下りてきたので当然であろう。 100m下るごとに0.6℃ずつ気温が上がるし、白夜の季節なので一日中、太陽が現れており、暖かくなるのも納得がいく。 今日の朝、1,250mのキャンプ地で−12℃だったが、目的地点では夕方の17時30分に−3.5℃であった。 今は雪が降り、しかも雨音のようにテントを叩いている濡れ雪である。

    


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